Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『僕は、語らない』




てくてくてく



こんこん



がちゃっ


エリック 「誰か、いる?」

グラン 「あ、おじさんおじさん。」

エリック 「おー、グランか。元気?」

グラン 「元気元気ー。」

エリック 「そうか。いい子だ。」


とたとたとた

ロザリア 「あら、エリック。来ていたの?」

エリック 「義姉さん。久しぶり。」

ロザリア 「どうしたの、突然?
 来るんなら連絡ぐらいくれればよかったのに。
 そうしたら貴方の好きなマカロニグラタン作ってあげるわよ……。」

エリック 「いや、いいんだ。ちょっと寄っただけだから。」

グラン 「……酔ってるの、酔ってるの?」

エリック 「いや、寄っただけだって。
 実は明日から僕の所属する旅団が遠征することになってね。
 長くなりそうだからその前に顔だけでも出しておこうかと。」

グラン 「夜逃げするの、夜逃げするの?」

エリック 「……グラン。この口か?そういうこと言うのは?」

グラン 「いたいいたい、エリックおじさん痛い痛い。」

ロザリア 「あら、そう……じゃああまり長居もしていられないわねぇ。」

エリック 「ところでグリフィスの奴はどうした?」

ロザリア 「あの子ならさっきまでその辺にいたんだけど……。」


ばきっ


エリック 「あ、いた。」

ロザリア 「ふぅ……また扉壊したの?グリフィス。」

グリフィス 「……あ、エリック兄貴!」

ロザリア 「誤魔化さないのっ。」

グリフィス 「ちぇっ。ごめんなさいっ。
 ……それで兄貴、
 今度はどのぐらいここにいるの?」

エリック 「だから僕のこと兄貴なんて呼ばないでってば。」

グラン 「エリックおじさん。」

エリック 「……それもなんかヤだな。」

グリフィス 「えー、でも兄貴すげーじゃん!
 カイザリアの軍隊に入隊、しかも北方調査部隊に配属されたんだろ!?
 かっこいーっ!」

エリック 「格好よくなんかないよ。きっと雑用押しつけられるだけで。」

グリフィス 「俺も将来、兄貴みたいに強くなるんだっ!
 そして傭兵になって大陸中駆けめぐるんだっ!
 傭兵ジオみたいにさっ!」

ロザリア 「それはそうとエリック、
 遠征に行くんなら気を付けてね。
 時々でいいから手紙書きなさいよ?」

エリック 「……手紙書いてもとどく場所かどうかはわからないけど、
 善処するよ。
 心配ありがとう、義姉さん。」

ロザリア 「だって貴方の親類はもう私達しかいないんですから。
 何か困ったことがあったらまたいつでも来ていいのよ?
 遠慮しないでね。」

エリック 「うん……義姉さん、やっぱり6年前から変わったね。
 人の死に対して臆病になった。
 それは、僕にも言えることだけど。」

ロザリア 「それはそうよ……身内が亡くなったんですもの。
 グリフィスの母親……私の最愛の姉が。
 だからあなただけは……。」

エリック 「……うん、わかってる。
 あ、そろそろ時間だ。
 じゃ、行ってくるね。」

ロザリア 「行ってらっしゃい…ちゃんと、帰ってきてね。」


『僕は、語らない。』



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