Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ メルセデス市
□ リリエンタール邸

メルフィア 「……率直に言って、時間がかかるわ。」

セディ 「ふむ。どのぐらいだ?」

メルフィア 「この注釈に忠実に創るなら1ヶ月ほど。
 適当ななまくらでもいいって言うのなら、
 時間は短縮できるけど?」

セディ 「……わかった。時間かかっても構わん。
 どうせ今すぐ使うわけではない。
 その代わり、精度は必ず高めてくれ。」

メルフィア 「ただし、こっちも条件が一つ。」

セディ 「?」

メルフィア 「先にその銀のインゴット交換証を渡して。
 そして余った分量は私の取り分。それとは別に報酬十万リル。
 それでよければ引き受けるわ。」

エーデル 「お嬢様っ!」

セディ 「ふっ。貴様、銀の価値を知って言っているのか?」

メルフィア 「当然よ。
 この仕事がどれだけ難しいか、分かってて依頼してるのでしょう?
 だったら相応の支払いは欲しいわね。」

セディ 「……ふっ。よかろう。
 その妥協せぬ姿勢、気に入った。
 余った分は全てくれてやる。」

メルフィア 「え?」

セディ 「……どうした、驚いた顔して?」

メルフィア 「え、いえ、まさか本当に通るとは……思わなかったから。」

セディ 「だからといって材料をケチったり手を抜いたら、
 力づくでも全てを取り返させて貰う。
 それでよいな?」

メルフィア 「ええ。私は決して仕事に手を抜いたりしないわ。」

セディ 「ふっ、頼んだぞ。
 完成するまでの1ヶ月、この町に滞在している予定だ。
 ちょくちょく様子を見には来る。」

メルフィア 「分かった。
 こっちも途中で直接確認したい箇所が出てくると思うし。
 それで、一つ疑問なんだけど。」

セディ 「ふっ、何だ?」

メルフィア 「こんな先の割れた銀の剣なんて、何に使うの?」

セディ 「ふっ。
 ちょっとした保険というところだ。
 将来のためのな。」

メルフィア 「将来? 剣と結婚でもするの? 無機質相手よ?」

セディ 「そういう話ではないっ!!!」



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