Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『いつの日か、きっと』




戦は、予告なく始まった。

ベル 「……あーっ!ちくしょーっ!」

レィディ 「荒れるのはわかけるど落ち着けって、グリフィス。」

ベル 「これが落ち着いていられるか?
 何もここまで村を破壊する事はねぇだろっ!
 まるで文明そのものを壊してるみたいじゃねぇか!」

レィディ 「アタイに怒るなよ。」

ベル 「いや、別にお前に怒ってるわけじゃないんだけどよ……。」


大陸歴639年 10月 初夏

ベル 「これで戦争だってことぐらい、俺にも分かる。
 けど、何もかも跡形残さず粉々にってのは、
 酷すぎるんじゃねぇのか!?」

レィディ 「破壊したいから破壊するんだろ。」

ベル 「……なぁ、レィディ。お前ちょっと冷静すぎない?」

レィディ 「アンタが興奮しすぎているんだよ。」


そしてその半年ほど前から始まった世界間大戦。

ベル 「エンディルの奴ら……よほど俺達が憎いみたいだな。」

レィディ 「憎い、ねぇ……。
 だとしたらどうして建物ばかり破壊して、
 人間を率先して殺そうとはしないんだい?」

ベル 「何いってんだ、実際死んでるだろうが、人間だって」

レィディ 「確かにエンディルに刃向かった人間の中には死んだ奴もいる。
 けど、無抵抗な一般人には手を上げようとしない。
 ついでに言えば、建物を壊す前にも必ず警告付きだ。」

レィディ 「……少なくとも今までは、な。」


異世界から攻めてきた「青き肌を持つ民」エンディル。

ベル 「じゃあ奴らは、人間を殺すのが目的じゃないってのか?」

レィディ 「そうなんじゃないの?」

ベル 「じゃあなんの目的なんだよ?」

レィディ 「アタイに聞くなよ。エンディルの連中に聞けよ。」


神出鬼没の如く大陸のあちこちに現れ、そして都市を破壊し続ける。

ベル 「一番わかんねぇのがよ、
 あいつら300年前にも攻めてきて、追い返されたわけだろ?
 それでこりてないってことなのか?」

レィディ 「そうまでしてでも、この世界に攻め入る必要があるんじゃないの?
 アタイはよく知らないけど、
 600年前のラファエル王国崩壊も、奴らが一枚噛んでるって話じゃないか。」

ベル 「何かを探すでもなく、人間を支配下に組み入れるでもなく、
 ただ家屋や城壁を破壊し続ける……。
 奴らの目的が全然見えてこねぇ。」

レィディ 「アイツら全員解体屋なのかもしれないぜ。依頼主無しの。」

ベル 「冗談はやめろよ、レィディ。」

レィディ 「アタイは可能性を述べただけだ。」


だが、依然としてエンディルの目的は明らかにされていない……。

ベル 「……ん? レィディ、今の聞こえたか?」

レィディ 「ああ、わかってる!子供の泣き声だっ!」

ベル 「この付近のガレキの中に埋もれているみたいだな……おい、聞こえるかっ!?」

レィディ 「そこだっ!グリフィス、この屋根をどかすよっ!」

ベル 「おうっ!」


分かっている事はただ一つ。
戦は依然として続いているということだ。
それも、人間にとって不利な状況で------。


『いつの日か、きっと』


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