4つ星の酒場


★ 第二話 『繰り返す日常』 ★


からんころん

アンジェリカ 「いらっしゃいませー…あ、ウィノナ。いらっしゃいー☆」

ウィノナ 「ねぇ、知ってる?」

アンジェリカ 「知らない。」

ウィノナ 「……私まだ何も言っていないんだけど。」

サフラン 「で、ウィノ、なにかあったの?」

ウィノナ 「今ここに来る途中で聞いた話なんだけどね、
 ほら、住宅街のパン屋さんあるじゃない?
 あそこのアリスさんがこの国の将軍と……」

サフラン 「あ、二人がつき合っているって話?」

ウィノナ 「知ってたの?」

サフラン 「うん。うちのおねーちゃんがこの間教えてくれた。」

アンジェリカ 「いけない関係になっちゃったのね☆」

ウィノナ 「あのねぇ……そうじゃなくて。」

アンジェリカ 「だってほら、セルシウス将軍31歳でアリスちゃん19歳だから、
 12歳も年下の女の子に手を出したことになるのよ☆
 きゃっ☆ いっけないんだぁ☆」

サフラン 「……何か根本的に誤解していると思うな、ボク。」

ウィノナ 「アンジェリカ。どうしてすぐそういう思考になるの?」

アンジェリカ 「てへっ☆」

ウィノナ 「てへっ、じゃなくて……。」

アンジェリカ 「やっぱりいけない関係なのね☆」

ウィノナ 「……あーのーねー、だからそうじゃなくて……。」


からんころん

ラルフ 「なにがいけないんじゃ?」

ウィノナ 「あら、ラルフの爺。」

ラルフ 「わしもな、今日に孫に会いにいこうと思ったんじゃが、
 結局道に迷っていけなくての。
 道がわしを避けるんじゃよ。」

サフラン 「その『いけない』じゃないと思う……」

ウィノナ 「お孫さんの家?どこにあるの?」

ラルフ 「うむ、わしの隣の家なんじゃがなぁ。」

ウィノナ 「どうしてそれで迷うのよ?」

アンジェリカ 「ただ真っ直ぐ進もうとするからいけないのよ。」

サフラン 「うん、それはボクも一理あると思う。」

アンジェリカ 「カニ歩きすればいいのよ。」

ウィノナ 「どうしてそうなるのよ?」

ラルフ 「おお、なるほど、カニ歩きか。」

サフラン 「ラ、ラルフおじいちゃん?」

ラルフ 「うむ!では早速孫の家に行ってみるとするかの。」

アンジェリカ 「がんばってねー☆」


からんころん

サフラン 「……本当にカニ歩きしてる。」

アンジェリカ 「がんばってねー☆」

サフラン 「……手までカニの真似する必要はないと思うんだけどな、ボク」

ウィノナ 「それ以前にどうしてカニ歩きなのよ?
 素直に従うラルフの爺も爺で……ってちょっと、爺!
 どこに行くのよ!そこを正面に真っ直ぐ行くのよっ!」

アンジェリカ 「ほら、カニって正面方向に歩けないし☆」

ウィノナ 「いつからラルフの爺はカニになったのよ?」

サフラン 「あっ、あっ、
 ラルフおじいちゃんっ、
 そのまま通り越して城壁の方に行っちゃったよ?」

アンジェリカ 「……きっとそのうちに戻ってくるわよ☆」

ウィノナ 「そのうちって、いつよ?」

アンジェリカ 「明日か明後日か明々後日には。……さて、お仕事お仕事☆」

ウィノナ 「アンジェリカっ!」


 ・・・・・・

アンジェリカ 「ところでウィノナ、ご注文は?」

ウィノナ 「そーねー、ポテトフライをいただこうかしら。」

アンジェリカ 「はーい。 マスター、ウィノナに沢ガニのから揚げー。」

ウィノナ 「違うわよっ!
 なんでそうなるのよ?
 それにカニはもういいから。」

アンジェリカ 「てへっ☆」

ウィノナ 「てへっ、じゃなくて。ポテトフライ一つね。」

アンジェリカ 「マスター、ウィノナにエビドリアひとつー」

ウィノナ 「誰もエビドリアなんか頼んでないわよっ!」

アンジェリカ 「エビダリア?誰、そんなこといったの?」

ウィノナ 「貴方に決まってるでしょ、アンジェリカ。」

サフラン 「……怖いもの想像しちゃった。」

アンジェリカ 「ダメよ、サフランちゃん。想像はパン屋の始まりっていうでしょ?」

サフラン 「……パン屋って、なに?」

アンジェリカ 「え?住宅街の。」

サフラン 「いや、そのぐらいなんとなく予想つくけど……。」

ウィノナ 「とにかくアンジェリカ、ポテトフライ一つね。」

アンジェリカ 「はーい。 マスター、ウィノナにポテト……」


からんころん

フィルバート 「こんばんは、入るよ。」

アンジェリカ 「あ、フィルバートさん。
 いらっしゃいー☆
 マスター、ウィノナにポテトフライをフィルバートさんのおごりで。」

フィルバート 「ち、ち、ちょっと待ってくれ。なんでそういう話になっているんだ?」

アンジェリカ 「自然の摂理。学校で習わなかった?」

サフラン 「習っていないと思う……。」

アンジェリカ 「わかったわ。サフランちゃんのおごりね。」

サフラン 「ボクそんなこと言ってないよぉっ!」

アンジェリカ 「けちっ☆」

サフラン 「けちって、何か違うんじゃ……。」

ウィノナ 「とにかく、私は自分の分ぐらい自分で払うわよっ。」

アンジェリカ 「はーい。フィルバートさんはご注文何にいたします?」

フィルバート 「いつものを貰おうか。」

アンジェリカ 「はい、いつものね。
 マスター、
 フィルバートさんにいつものストレートアイスティー。」

マスター 「あいよ。」

ウィノナ 「……サフランといいフィルバートといい。
 どうしてこの酒場ってアルコール以外のものを
 飲む人が多いのかしら?」

アンジェリカ 「あたし飲むわよ☆」

サフラン 「アンジェはボクと一緒でまだ未成年……」

アンジェリカ 「ところでフィルバートさん、氷はいる?いらない?」

ウィノナ 「……話、逸らしたわね。」

フィルバート 「氷か。ああ、貰おうか。」

アンジェリカ 「マスター、アイスティーを氷だけでお願いー」

マスター 「あいよ。」

フィルバート 「ち、ち、ちょっと待ってくれ、誰がそんなこと頼んだ?」

ウィノナ 「なによ、その氷だけってのは?」

アンジェリカ 「てへっ☆」

ウィノナ 「ごまかさないの。」

マスター 「あいよ。アイスティー、氷だけ。」

フィルバート 「……アイスティーどころか氷しか入っていないぞ、このコップ。」

アンジェリカ 「だから、氷だけ☆」

ウィノナ 「注文を曲解するウェイトレスもウェイトレスだけど、作るマスターもマスターよね……。」

アンジェリカ 「え?うちのパパがなに?」

マスター 「呼んだか?」

ウィノナ 「遺伝って怖いわね。」

フィルバート 「いいから早くアイスティー持ってきてくれよ……。」


 ・・・・・・

アンジェリカ 「はい、アイスティーおまたせ。」

フィルバート 「ん?今度は氷が入ってないぞ。」

アンジェリカ 「いまから入れてあげる☆ 適当な所でストップって言ってね☆」

フィルバート 「そうだな、少しもらおうか。」


がらがらがら

フィルバート 「ありがとう。」


がらがらがら

フィルバート 「いや、だからストップ。もういいのだが。」


がらがらがら

フィルバート 「おい、それは多すぎるぞ」


がらがらがら

フィルバート 「あ、おい、あふれるあふれる!」

アンジェリカ 「てへっ☆ごっめーん」


がらがらがら

フィルバート 「いいながら入れるなぁぁぁあ、氷があふれてるあふれてる。」

アンジェリカ 「誰のせいかしら?」

ウィノナ 「貴方よ、アンジェリカ。」

アンジェリカ 「だめじゃない、サフランちゃん。」

サフラン 「僕じゃないよーっ!」

アンジェリカ 「なに?サフランちゃんも氷欲しいの?」

サフラン 「そんなこと言っていないー」

アンジェリカ 「サフランちゃんにはもっといいものをあげる☆」

サフラン 「ねぇウィノ、アンジェのあの目は何かよからぬことを考えている目だよね?」

アンジェリカ 「あらぁ☆
 よからぬことだなんてそんなぁ☆
 ただあたしはサフランちゃんに☆」

ウィノナ 「ねぇ、アンジェリカ、その手に持っていてる瓶は何?」

アンジェリカ 「グレープジュースよ☆ 発酵させてあるけど☆」

ウィノナ 「立派なお酒じゃないっ!」

アンジェリカ 「ヨーグルトだって発酵しているのよ?
ほら、同じこと同じこと☆
ね☆ どお?」

ウィノナ 「ね☆、じゃなくて。
 いいからそのお酒を元あったところに戻してきなさい。
 ……まったくもう、このウェイトレスは……」

アンジェリカ 「なにー?呼んだー?」

ウィノナ 「いいから早くそのお酒戻してきなさいっ」

フィルバート 「……どうでもいいから早く俺にまともな飲み物くれよ。」


 ・・・・・・

ウィノナ 「まったく。すぐこうなるんだから。」

アンジェリカ 「誰のせいかしら?」

サフラン 「アンジェ、人のせいにするのはよくないとボク思うな。」

アンジェリカ 「そう。サフランちゃんのせいなのね。」

サフラン 「だからボクじゃなくてー。」

ウィノナ 「言ってる側からこれだものね、アンジェリカは。」

アンジェリカ 「男の子がそんな些細なことにこだわってちゃだめよ☆」

サフラン 「ボクは女の子だようっ!男の子じゃないもん。」

アンジェリカ 「え?どれどれ☆」

サフラン 「きゃっ!?」

ウィノナ 「ち、ちょっとアンジェ、どこのぞき込んでるのよっ!」

アンジェリカ 「サフランちゃんの胸。」

サフラン 「えっちぃっ!」

アンジェリカ 「……サフランちゃん、本当に女の子?」

サフラン 「う、うるさいなぁっ!」

アンジェリカ 「だって下着付けてないみたいだしー☆」

サフラン 「す、するほどないのっ!」

アンジェリカ 「口調も男性か女性か分からない感じだし」

サフラン 「ボクのこれは遺伝なのっ!
 おねーちゃんだってそうだもん。
 うーっ。」

アンジェリカ 「サフランちゃん、頭抱えてどうしたの?腹痛?」

サフラン 「ちがうよぉっ!」

ウィノナ 「腹痛でどうして頭押さえるのよっ!!!」

アンジェリカ 「じゃあ腰痛?」

サフラン 「そういう問題じゃないんだってばぁ。」

アンジェリカ 「わかった、
 草津の湯でも治らないっていうアレね。
 ダメよ、あたしに惚れたら☆きゃっ☆」

サフラン 「違うよぉっ!」

アンジェリカ 「でも草津の湯でも治らないのが
 恋じゃなくて頭の病気だと思っている人も
 世の中にはいることだし☆」

ウィノナ 「誰の事よ?」

アンジェリカ 「さぁ?誰のことかしら?」

ウィノナ 「全然関係ないじゃない。
 ……そのなんとかにつけるクスリがあったら、
 是非とも貴方につけてあげたいわ」

アンジェリカ 「あたし飲み薬の方がいいなっ☆
 ところで何の薬?
 匂いを嗅いでいい気分になるのね☆」

サフラン 「い、いや、そうじゃないと思う……」

アンジェリカ 「あらっ、アロマテラピーのことじゃなかったのね。」

サフラン 「……アンジェ、何か誤解してる。」

アンジェリカ 「あ、わかった。サフランちゃんの胸が大きくなる薬?」

サフラン 「ちがーうっ!」

アンジェリカ 「でもあたしはほっぺた柔らかいほうが好きー☆」

サフラン 「アンジェー、ひっぱっちゃいやー」

ウィノナ 「ちょっとアンジェリカっ!」

アンジェリカ 「ウィノナもいっしょにサフランちゃんのほっぺ触るー?」

サフラン 「ふにゅうー。」

ウィノナ 「だからそれをやめなさいって!」

アンジェリカ 「きゃーーー☆ 柔らかいーーー☆ ふにふにー☆」

サフラン 「ふにゅうー。ほっぺのばしちゃいやー。」

ウィノナ 「アンジェリカっ!」

フィルバート 「あのさ、どうでもいいから早くアイスティー……」

アンジェリカ 「のびるーーー☆ ふにふにーーー☆ おもしろーい☆」

サフラン 「ふにゅううう。のばしちゃいやいやぁ」

ウィノナ 「ちょっと、アンジェリカ!だから貴方って人は……」

フィルバート 「……えっと、俺のアイスティー……」

アンジェリカ 「きゃーーーっ☆ サフランちゃんのほっぺたーーー☆」

サフラン 「ふにゅうーーー」

ウィノナ 「アンジェリカっ!」

フィルバート 「……それはそうとさ、俺のアイスティー……まだ?」


そして、夜は更けていく……。


第二話『繰り返す日常』 おわり。


あとがき

どうも、木枯吹雪です。
そういえば数年前に「なんで痩せてるのにほっぺただけ伸びるの?」とわけのわからないことを人から言われた記憶が。(注)
……あ、本当だ。伸びる。なんでだろ。
いや、そんなことはどうでもいいか。

閑話休題。

というわけでよければ下にあるアンケートにも回答頂ければ幸いです☆

よく考えたら先月は宮殿や書庫のあちこちを手直ししてたせいで、作品入荷していなかったんですねぇ。
細かい修正や見えない部分の整理整頓もとりあえず先月で一段落したので、今月からはまた色々な作品を入荷していきたいなと思っています。
とりあえず次回は……『失われた7枚』シリーズ7作目『夜明けの前に』かな?
(注:変更の可能性大)

ではではまた次回作で。



            東西ドイツ統一八周年の翌日に

                        木枯 吹雪



1998/10/04 初版

(注:痩せていると皮下脂肪の厚みと弾力がないために伸びるんだそうです。教えてくださった方々ありがとうございます.1998/10/05)

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