『僕は、語らない』
「越えたな、絶対生命緯度線を。」
「!?……これは?」
「大地が……曲がっている?
いや、それだけじゃない。
所々ごっそり地面がえぐれている……。」
「魔導でそんなことは不可能のはず。
じゃあ一体どうやって……。
隊長、ここは一体……。」
「……これこそ湾曲の爪痕。
やはり残っていたか、この北の大地に!
絶対生命緯度線以北と呼ばれるこのエリアに!」
「いや、実際は世界中に刻まれた湾曲の爪痕が
未修復のまま残っているというべきか。
そう、我々の住む地域のように整地されていないからな。」
「整地……?」
「この大地に残された大きな爪痕こそが、
そして球状にえぐられた大地の穴こそが、
かつて、世界が滅びかけた決定的証拠だ。」
「世界が滅びかけた!? ただの伝説じゃなかったのか!?」
「伝説などではない。れっきとした歴史の事実だ。」
「一体過去に何が……!?」
「……アインシュタイン・プロジェクト。」