Forbidden Palace Library #04 彷徨いし来客


王都シルバニア
王城3階 作戦会議室



ボイス 「……以上が来年度の王立軍予算の配分予定となるが、何か異議は?」

アシスト 「あるある、大ありだ。
 そんな馬鹿な話に予算を費やすよりは、
 俺の魔導実験台購入費を……」

ボイス 「馬鹿とはなんだ、将軍に向かって!」

アシスト 「あたりまえだろ、どこにおやつのクッキー代を国家予算から出す国がある?」

レナード 「ここに。」

ベル 「……なんかその口調に既視感を憶えるんだけど、気のせいか?」

アシスト 「なにを訳のわかんないこと言ってんだよ。
 とにかくクッキー代を国家予算から捻出することに俺は断固として反対だ。
 そんな余裕があったら是非とも実験台確保のために……」

エリーゼ 「ロウクス君!
 あ、い、いえ、アシスト師団長っ!
 またそうやって実験台とか考えて!」

ユリア 「……ロ・ウ・ク・ス・君〜?
 あらぁ、エリーゼちゃん☆
 今、ロウクス君って言わなかったぁ?」

エリーゼ 「な、なんですか、ユリア師団長。……べ、別にいいじゃないっ。」

ユリア 「ひゅーひゅー☆」

アーク 「ねぇねぇ、予算審議を延長して白熱してる最中に
 水を差すようだけど、このあとカイザリア帝国から
 新しい駐在大使が着任するんじゃなかったっけ?」

エリーゼ 「ユ、ユリア師団長っ!」

ユリア 「耳まで赤くなっちゃって、エリーゼちゃんかぁわいいー☆」

ボイス 「とにかくわしのクッキー代……」

アシスト 「却下だ却下、そんなもの。」

アーク 「駐在大使、誰が迎えに行くの?」

ユリア 「それよりもさっ、町中をもっともっと明るくしない?
 私が夜でも出歩けるように、ぱーって暗闇無くしちゃうの☆
 いい案だと思わないー?ね、ね☆」

ベル 「他の都市に較べたら街灯も整備されてるし、もう十分明るいだろうが。」

ユリア 「いっそ夜も昼にしなきゃイヤイヤンっ!」

アーク 「……誰か僕の話、聞いてる?」

ベル 「なぁユリア、
 前からかねがね疑問だったんだが、
 お前どうしてそんなに暗いのが苦手なんだ?」

ユリア 「やーねー。
 そーやって乙女の秘密を探ろうとして☆
 ……グリフィスちゃんのえっち☆」

ベル 「だぁぁぁぁぁぁっ!どうしてそうなるぅぅぅっ!」

アシスト 「……えっち☆」

ベル 「お前まで言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

アーク 「うん。
 わかった。
 じゃあ僕が迎えに行ってくる。」

アシスト 「だがしかし、真実は追求してこそだよな。
 なぁボイス将軍、あんたユリアの祖父だろ?
 どうしてあんたの孫娘はこれほどまでに暗所恐怖症なんだ?」

ユリア 「だめだめだめぇっ!思い出すから言っちゃだめぇぇぇっ!」

ボイス 「……そうか。大陸の由来を知りたいというか。
 伝承によれば……我々が大陸歴と呼んでいる年号が出来る以前、
 そう、現在旧暦と呼ばれている年号が用いられていた時代……」

アシスト 「あー、だめだこりゃ、また昔話モードにはいりやがった。」

アーク 「確か待ち合わせ場所は……城壁北のネフライト門の前だっけ?
 うん。それなら大丈夫。
 だって僕の家のすぐそばだもん。じゃあ行ってくるね。」


ばたん。

ボイス 「……人はかつて魔導を持っていなかった。だが、決して野蛮だったわけではない。
 今となってはどの程度の文明だったかはよくわからないが、 
 地と海と空、そして空の果てまでも統べようとしていたとの事だ……」

エリーゼ 「……レナード副将軍、先ほどから熱心に一体何をメモしているんですか?」

レナード 「あ、いや、なんでもない。気にするな。」

アシスト 「……今その紙に『A計画』とか書いてなかったか?」

ユリア 「え?なになに?A計画ってなに?」


こんこん。

「秘書です。
 ただいま戻りました……あれ?
 アークライト師団長がいませんけど、また大幅な遅刻ですか?」

ユリア 「え、アーク?
 さっきまでそこにいたはずなんだけど……机の下?
 本棚の中にも……いないわねぇ。」

アシスト 「じゃあ引き出しの中か?」

「子猫じゃないんですから、そんなところにいるわけないですよ。」

ボイス 「……まさにその時、わしは悠然と剣を両手に立ち向かい……!」

ベル 「なぁ、また将軍のいつもの昔話になってないか?」

レナード 「……ああ、そういえば。」

ユリア 「どうしたの、レナードちゃん?」

レナード 「いや、さっきアークが、誰かを迎えに行くとか言っていたような。」

エリーゼ 「そういわれれば……カイザリア帝国からの駐在大使を迎えに行くとか……」

「誰が迎えに行ったんです?」

レナード 「だからアークライトが……まずいっ!
 おい、秘書っ!
 先回りして早く駐在大使を迎えに行ってくれっ!」

「あ、は、はいっ!
 ってどんな方なんです?
 駐在大使って?」

レナード 「赤毛の変な男だ。名はグラン=ハミルトン。早く行けっ!」

「は、はいっ!!!!」


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