
 「……とは言ったものの、
「……とは言ったものの、
 レナード将軍の行き先は把握してないしなぁ。
 私、秘書のはずなんだけど。うーん。」
 「何をうろうろしとるんじゃ、秘書。」
「何をうろうろしとるんじゃ、秘書。」
 「あ、ボイス元帥。
「あ、ボイス元帥。
 そっか、前将軍のボイス元帥に聞けばいいのか。
 あのー、すいません。」
 「うむ、どうしたね。
「うむ、どうしたね。
 どこか美味しいミルククッキーの店でも見つけたか?
 もしそうなら至急報告書の提出を……。」
 「いえ、そうではなく。
「いえ、そうではなく。
 ちょっとお訊ねしたいことがありまして。
 城壁守備隊の顧問の事で。」
 「うむ?」
「うむ?」
 「例えばジェラード副師団長の場合、
「例えばジェラード副師団長の場合、
 欠員による師団長代理という立場なんですが、
 それでも顧問になる資格はあるのか、と。」
 「なるほど、コペルニクスか。
「なるほど、コペルニクスか。
 最近は普通に師団長扱いしておったが、
 言われてみれば役職はまだ副師団長だったな。」
 「確かにあやつは先日まで城壁守備隊の第一線に立っておった。
「確かにあやつは先日まで城壁守備隊の第一線に立っておった。
 それだけに現場を熟知していると言えるだろう。
 なにより部下を圧倒するあのカリスマは他に類を見ない。」
 「……あれ、カリスマっていうんですか?
「……あれ、カリスマっていうんですか?
 単なる高枝切りバサミの恐怖なんじゃ。
 こう、ホラー的な、そういう……。」
 「城壁守備隊の顧問は、熟練した司令官が兼ねる事が多いが、
「城壁守備隊の顧問は、熟練した司令官が兼ねる事が多いが、
 軍法上はそういう明確な規則があるわけではない。
 資格という意味では充分にあるのではないかね?」
 「なるほど、了解です。」
「なるほど、了解です。」
 「ところでどうしたんだね、突然そんな事?」
「ところでどうしたんだね、突然そんな事?」
 「あ、いえ、別に大した事じゃないんです。」
「あ、いえ、別に大した事じゃないんです。」
 (でもあの人が出世すると、
(でもあの人が出世すると、
 そのうち軍の標準装備が全て高枝切りバサミに
 置き換わってしまいそうな予感が。)
 (……まさか、ね。まさかそんなことは、ね?)
(……まさか、ね。まさかそんなことは、ね?)
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