「復讐だと?」
「――生き別れの妹が、いましてね。」
「……?」
「いえ、最初は目的が別にありました。
私がまだメルフィアの父親、
リリエンタール卿に師事していた頃。」
「丁度、彼の名が国中に広まった頃でしょうか。
そのリリエンタール卿の追放を条件に、
私を法員として推薦するという話がありましてね。」
「!!!」
「法員になれば、
普段は読むことすら許されない禁忌書すら
目を通すことが出来るようになる。」
「……まさか、そのためにパパをっ!」
「悪く思わないで下さい、メルフィアお嬢様。
真実の探求は、貴方の父上に師事する以前からの
我が一族の至上目的なのです。」
「その為に私はありとあらゆる文献を読みあさった。
いえ、文献だけではありません。
禁忌品にも触れることで、この世界の秘密を知った。」
「……ほう。」
「権力というのは、時として情報の集中をもたらす。
今は亡き母上から死んだと聞かされていた妹が、
まだ隣国で生きている事を偶然知りましてね。」
「それが、何だと言うのだ。」
「その残された唯一の肉親に、
取り急いで連絡を取ろうとした矢先、
彼女は――私の妹は、殺された。」
「!?」
「そう。宰相エルネストの手によって、ね。」
「なん……だと……?」
「セディ、貴方――――。」
「ふっ、私は極力女子供は殺さぬようにしている。
人類を絶やしては元も子もない。
それでも抹消するのは相応の理由がある時のみだ。」
「死体すら残さぬ殺し方をされた我が妹は、
果たして如何なる絶望をその瞳に宿していたか。
その時から、私の目的は変わったのですよ。」
「宰相エルネストへの復讐へと。」
「……ヴェンツェスラウス。
貴様のフルネームをまだ聞いていなかったな。
名乗るがよい。」
「――レーマー。
Wenzeslaus=Römer
ヴェンツェスラウス=レーマー。」